今年もブログを読んでくださり、ありがとうございました。
6月よりIRを担当させていただくこととなり、ブログ記事も書かせて頂くようになりました。感想などもお寄せいただきありがとうございました。
・3Q決算について(10/13)
→思わせぶりなタイトルでしたが、単なる告知でした。R&D説明会を実施することをお知らせさせていただきました
・ペプチドリーマー (5/31)
→岩田さんが5月いっぱいで退職された際の投稿です。9年間のペプチドリームに関する思い出が書かれています
みなさま、こんにちは。IR広報部の沖本です。
本日はペプチエイドで実施しているコロナ治療薬プログラム(PA-001)の進捗について補足させていただきます。PA-001は2021/11/11に非臨床試験完了と2022/1の臨床研究の開始についてリリースしましたが(リンク)、R&D説明会ではさらに、①緊急使用許可取得済みの薬剤との併用効果、②経口剤としての可能性、についてご紹介させていただきました。
①
他の薬剤との併用効果
他の薬剤と併用することで、効果を数十倍に高めたり、投与量を減らすことができるというデータをご紹介しました。
②
経口剤としての可能性
経口製剤技術を用い、経口投与により十分な血中濃度が得られることを動物実験で確認しました。これは、2021/8/27のブログでご紹介したような(リンク)、経口化するためヒットペプチドの構造を変えていくということではなく、製剤技術(元の薬にさまざまな物質を加えて実際に服用される形態にすること)によって経口剤として使えるようにするというコンセプトです。
これらはいずれも、PA-001の独自の作用機序や、変異株への効果に加えての優位性になると考えています。提携活動においてもプラスになる情報として活用したいと思っています。
ペプチエイドが取り組むコロナ治療薬開発の取り組みについて金曜日に放送されるガイアの夜明けで取り上げていただくことになりました。
放映日時:2021年12月17日(金)22:00~
放送局:テレビ東京系列
番組名:ガイアの夜明け「ワクチンの真実3~独占取材!“国産開発”の全貌~」(リンク)
また、ガイアの夜明けの放送に先立ち、テレ東BIZという経済動画サービスで取り上げていただきました。
ペプチド医薬品やPA-001について解説しています(リンク)。
こちらも併せて、よろしければぜひご覧ください。
引き続きよろしくお願いいたします。
みなさま、こんにちは。IR広報部の沖本です。
11/29に開催したR&D説明会で、Bristol Myers Squibb(BMS)社とのプログラムの進捗についても説明させていただきました。
BMS社とは2010年に創薬共同研究を開始し、複数のプロジェクトを進めています。現状、PD-L1に関連する治療薬・診断薬が臨床試験にはいっています。
PD-L1阻害ペプチドとして開発を進めているBMS-986189は2016年6月にフェーズ1試験に入り、2016年12月に終了しました(リンク)。
PD-L1阻害剤
試験の目的は薬物動態や安全性を確認することであり、良好なデータが取得されました。今後は新たなBMS-986189アナログに対する別の臨床試験を計画中であるとのことです。
食道・胃に関連する各種がんに対する診断薬として開発を進めているBMS-986229はPD-L1阻害ペプチドに放射性物質である18F(=放射性物質)を結合したPDC医薬品です。18FのシグナルをPET/CTで検知することで、PD-L1陽性のがん細胞の体内での存在の有無や分布を知ることができ、今後の治療方針(免疫チェックポイント阻害剤が有効かどうか)を決める際に役立つと考えられます。Clinicaltrials.govによると試験の終了は2023/11/12を予定しています(リンク)。
PD-L1への特異的結合
PET/CTとはPET(陽電子放出断層撮影)検査と、CTによる画像検査を組み合わせたものです。一般的なPET検査はブドウ糖に18Fを組み込んだ18F-FDGを用います。がん細胞は代謝が活発なので正常細胞より多くブドウ糖を取り込むため、ある大きさ以上のがんはPETで発見できると言われています。CTはX線を用いて部位を絞って人体の輪切り画像を撮影していく装置です。一般的なFDG-PETはブドウ糖の集積という現象に基づくイメージング手法なので、MRIやCTなど、臓器の形態の撮影に秀でた検査と組み合わせることが一般的です。
BMS-986229はPD-L1阻害ペプチドと18Fを組み合わせることで、PD-L1を発現している細胞に特異的に結合しシグナルを発生するため、FDGを用いる検査より高い精度でPD-L1陽性のがん細胞を検出できると考えられます。このように、薬剤ターゲットに特異的なPETイメージングが実用化されることで、治療方針の決定や治療効果の判定を迅速に行うことができ、がんのような進行性の疾患に対する治療の大幅な改善が期待できます。
BMS社のプログラムは2016年に臨床試験に入って以来、あまり進捗をお伝えできていなかったので、今回限られた内容ではありますが、可能な範囲で開示させていただきました。がん免疫の領域はBMS社にとって重要な領域の1つであり、薬剤の開発状況や市場環境の変化もある中で、当プログラムについての開発方針を考えているのではないかと思います。
今後も可能な範囲でアップデートをお伝えできればと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。
モジュール②はBiohaven社の独自の技術でIgG抗体に結合する性質を持つ分子です。
本来NK細胞は特定のタンパク質をターゲットにすることは無いのですが、今般の併用試験ではBHV-1100がNK細胞と骨髄腫細胞をブリッジすることにより、NK細胞が効率的に骨髄腫細胞まで運ばれ、免疫作用によりがん細胞を破壊することを狙いとしています。
CD38はすでに効果が検証されているターゲットです。
CD38を標的とするモノクローナル抗体であるDarzalex(ダラザレックス)は
2015年に再発性・難治性の多発性骨髄腫に対する治療薬として米国で上市し、
2019年からは移植が不適応の多発性骨髄腫のファーストライン治療として使用されています。
ARMは2つのモジュールの組み合わせにより
抗体医薬のADCC活性と同じ働きを持たせることを目指しており、
さらに以下の点などが抗体医薬品より優位である可能性があります。
・サイズが小さく、目的に合わせてモジュールを組み替えることが可能
・製造コストが小さく、製造にかかる時間も短い
・サイズが小さいため免疫原性などの問題を起こしづらい
また、CD38-ARMに関する細胞や動物を用いた実験では、
ダラザレックス投与でみられる副作用の1つであるNK細胞の減少が起きていないという結果が得られています。
今般のフェーズ1a/1b試験の主な目的は安全性を確認することにありますが
移植後MRD陽性からMRD陰性へと変化させる作用があるか、生存率の向上が認められるかなど、治療効果も確認する計画です。
※がん治療薬の場合には、一部有効性データを含めたPh1a/1b試験を完了した後に、Ph2/3(ピボタル試験)を行うという、2段階での開発を行うケースが多いです。旧Kleo社では、Ph2/3ピボタル試験の前段階として、Ph1/2試験と称していましたが、内容としては同じものを指しています。
Biohaven社が患者さんのリクルートを開始したのは2021年6月でしたが、最初の患者登録は2021年10月と想定以上に時間を要しました。移植を伴う治療であり、また免疫機能に影響を受けているがん患者さんに対する臨床試験という中、コロナ禍の中で治験を実施する医療機関側の受け入れ体制の確保、治療のスケジュール調整に時間を要したという背景があったものと認識しています。株主の皆さまからはご心配の声を多くいただきましたが、ようやく開始することとなり大変うれしく思います。
PDPSから生み出されたPDC医薬品がはじめて臨床試験に入るということで、大変楽しみにしているとともに、今後の進捗をしっかり見守っていきたいと思います。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
参考にしたサイト:
Johnson & Johnson 開示資料
ダラザレックス インタビューフォーム
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