2019年6月19日水曜日

米クリオ社との共同研究において多発性骨髄腫を適応症とする臨床候補化合物を創製

みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。当社は6月18日、「戦略的パートナーであるクリオ社との共同研究において多発性骨髄腫を適応症とする最初の臨床候補化合物CD38-ARM創製に関するお知らせ」を発表しました。

Kleo Pharmaceuticals(以下 クリオ)は米国のイエール大学発創薬系バイオベンチャーです。当社はクリオと2017年7月に、複数の適応症でがん免疫治療薬の共同研究開発を行う戦略的共同研究開発契約を締結しています。現在複数のプログラムで共同研究開発を進めていますが、それらプログラムの中で最初の臨床候補化合物が得られましたので今回、プレスリリースしました。

今回創製された臨床候補化合物は、多発性骨髄腫を適応症とするCD38-ARMです。多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)という病気は、骨の中にある「骨髄」という組織で、体を異物から守る抗体を産生している「形質細胞」ががん化する代表的な血液がんの一つです。異常が起こった形質細胞を「骨髄腫細胞」と呼びますが、骨髄腫細胞は異物を攻撃する力をもった抗体をつくることができず、役に立たない抗体(Mたんぱく)をつくり続けるため様々な悪い症状(骨の痛みなど)を引き起こします。厚生労働省による患者調査では日本国内の総患者数は約1万8000人と推定されています(2014年時点)。

CD38-ARMは、骨髄腫細胞のほとんどに発現しているCD38という分子(膜たんぱく)を標的とし、CD38に特異的(選択的)に結合する特殊環状ペプチド(当社が特定したもの)に、クリオのがん免疫療法のプラットフォームであるARM(アームと呼んでいます)を結合させた構造の化合物です。ARM(Antibody Recruiting Molecule)は、体内にもともと内在する抗体と結合し、その抗体が腫瘍細胞への高い殺傷能力を有するNK(ナチュラルキラー)細胞やマクロファージを誘導することで骨髄腫細胞を攻撃する作用メカニズムをその特徴としています。特殊環状ペプチドに、免疫誘導できるがん免疫治療薬を結合させたPDC医薬品ということができます。

クリオのCEOは、2020年に臨床開発入りすることを予定しているとコメントしており、いよいよ戦略的提携企業との共同研究開発から創製した化合物が臨床試験に入る日も近づいてきたなと思っています。