2020年10月17日土曜日

富士通との共同研究の成果を発表

 みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。当社は10月13日(火)に、富士通株式会社と2019年9月に開始したペプチド創薬に関する共同研究の成果として、創薬の候補化合物となる環状ペプチドの安定構造探索を高速かつ高精度で実施することに成功したと発表しました。

富士通は膨大な組合わせの中から最適な組合わせを探し出す“組合わせ最適化問題”を高速に解く「デジタルアニーラ」を持っており、計算量が膨大で従来のコンピュータでは解くことができなかった問題において最適解を見つけ出すことができます。この技術とHPC(高性能コンピューティング)を活用することで、当社の創薬プロセスにおいて、候補化合物を探索する際に必要な情報である「環状ペプチドの安定構造」の探索を12時間以内に高精度で実施することに成功しました。

当社のPDPSを用いた創薬は、1兆種類以上の環状ペプチドからなる化合物ライブラリーを作成し、その中から病気の原因となる標的タンパク質と強く結合するものを短期間で選び出すことから始まります。この次に、選び出された環状ペプチドを薬効、安全性、代謝などの条件を満たす医薬品候補化合物へと仕上げるために、さらに活性を高め、しかも安定なものにしていく創薬プロセスが必要になります。この工程において必要となる情報が環状ペプチドの安定構造(分子が安定する立体構造)です。

ペプチドは2個以上のアミノ酸分子が化学結合によって鎖状あるいは環状につながった化合物です。アミノ酸分子の結合は様々な角度をとることができますのでアミノ酸の配列が同じでも、とりうる立体構造は膨大な数となります。その中から安定構造を探索するのに、コンピュータを用いた計算と実際にその構造のペプチドを作成して研究室での実験で検証することを繰り返すことが必要となり、ざっくり言うと化合物一種類当たり数日間かかっていました。これを今回、「デジタルアニーラ」とHPCを活用することで、12時間以内に高精度で実施することに成功したのです。

発表の翌日の新聞を見ますと、数カ月かかっている医薬品候補化合物の探索が12時間以内になると勘違いされている記事もありましたが、そうではなく、医薬品候補化合物を見出す創薬プロセスの前段階で必要な環状ペプチドの安定構造の探索を12時間以内に高精度で実施することに成功したのです。

ただし、これにより、PDPSにより見出された標的分子に強く結合する環状ペプチドが、どのような安定構造をとりうるのかが事前に網羅的にわかるようになり、その後の創薬プロセス(絞り込み作業)において、無駄なものを作成して実験する時間とコストを削減することができますので、結果として数カ月かかっている候補化合物の探索期間を大幅に短縮することにつながると思います。

ペプチドリームのミッションは、全世界の病気で困っている方に薬を届けて、一人でも多くの方に「ありがとう」と言ってもらえる仕事をすることです。世界に先駆けて革新的な新薬創出を実現するにはIT技術の活用は不可欠となっており、世界最先端のテクノロジーを持つ富士通とさらなる創薬プロセスにおけるイノベーションを図っていきたいと考えております。

戦略的パートナー・RayzeBio社が約47億円の資金調達

 みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。当社は2020年8月に米国カリフォルニア州サンディエゴに本拠を置くRayzeBio Inc(レイズバイオ社)との間で、ペプチド放射性医薬品の創製に関する戦略的共同研究開発契約を締結しています。このレイズバイオ社が、10月14日(現地時間)に4,500万米ドル(約47億円)の資金調達を行ったことを発表しました。これで当面の運営資金を確保できたので、開発に弾みがかかることが予想されます。

この記事はBioCenturyやBioWorld等の専門誌にも大きく取り上げられていますが、その中でレイズバイオ社の社長兼CEOであるKen Song氏のコメントとして、2021年の下半期に少なくとも1つの医薬品開発候補品を持つこと、および2022年下半期の臨床試験入りが目標と記載されています。

Ken Song氏はバイオ企業のIPOや上場バイオ企業の経営等に高い実績がある人物です。コメント通りに開発が進捗することを期待しています。