みなさま、こんにちは。IR広報部の沖本です。
11/29に開催したR&D説明会で、Bristol Myers Squibb(BMS)社とのプログラムの進捗についても説明させていただきました。
BMS社とは2010年に創薬共同研究を開始し、複数のプロジェクトを進めています。現状、PD-L1に関連する治療薬・診断薬が臨床試験にはいっています。
PD-L1阻害ペプチドとして開発を進めているBMS-986189は2016年6月にフェーズ1試験に入り、2016年12月に終了しました(リンク)。
PD-L1阻害剤
試験の目的は薬物動態や安全性を確認することであり、良好なデータが取得されました。今後は新たなBMS-986189アナログに対する別の臨床試験を計画中であるとのことです。
食道・胃に関連する各種がんに対する診断薬として開発を進めているBMS-986229はPD-L1阻害ペプチドに放射性物質である18F(=放射性物質)を結合したPDC医薬品です。18FのシグナルをPET/CTで検知することで、PD-L1陽性のがん細胞の体内での存在の有無や分布を知ることができ、今後の治療方針(免疫チェックポイント阻害剤が有効かどうか)を決める際に役立つと考えられます。Clinicaltrials.govによると試験の終了は2023/11/12を予定しています(リンク)。
PD-L1への特異的結合
PET/CTとはPET(陽電子放出断層撮影)検査と、CTによる画像検査を組み合わせたものです。一般的なPET検査はブドウ糖に18Fを組み込んだ18F-FDGを用います。がん細胞は代謝が活発なので正常細胞より多くブドウ糖を取り込むため、ある大きさ以上のがんはPETで発見できると言われています。CTはX線を用いて部位を絞って人体の輪切り画像を撮影していく装置です。一般的なFDG-PETはブドウ糖の集積という現象に基づくイメージング手法なので、MRIやCTなど、臓器の形態の撮影に秀でた検査と組み合わせることが一般的です。
BMS-986229はPD-L1阻害ペプチドと18Fを組み合わせることで、PD-L1を発現している細胞に特異的に結合しシグナルを発生するため、FDGを用いる検査より高い精度でPD-L1陽性のがん細胞を検出できると考えられます。このように、薬剤ターゲットに特異的なPETイメージングが実用化されることで、治療方針の決定や治療効果の判定を迅速に行うことができ、がんのような進行性の疾患に対する治療の大幅な改善が期待できます。
BMS社のプログラムは2016年に臨床試験に入って以来、あまり進捗をお伝えできていなかったので、今回限られた内容ではありますが、可能な範囲で開示させていただきました。がん免疫の領域はBMS社にとって重要な領域の1つであり、薬剤の開発状況や市場環境の変化もある中で、当プログラムについての開発方針を考えているのではないかと思います。
今後も可能な範囲でアップデートをお伝えできればと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。