みなさま、こんにちは。IR広報部の沖本です。
2Q決算説明会では、テクノロジーアップデートとして細胞膜を通過させるためのペプチドリームの3つのアプローチをご説明させていただきました。
細胞内のターゲットを狙う時や、経口剤として消化管から体内に吸収させターゲットへと薬効成分を届けたい時には、薬剤に細胞膜を通過できるような性質を持たせることが必要になります。
ペプチドリームでは特殊環状ペプチドを用いた細胞膜透過に関する研究を継続的に行っており、4~5年前では難しかったことが100%とはいかないものの、着実に進歩してきています。
細胞膜透過性を持たせる3つのアプローチとは、
- ペプチドの最適化
- 受容体を介した細胞内取り込み
- 低分子化
特殊環状ペプチドそのものに膜を通過する性質を付与し、細胞内にあるターゲットを狙う方法です。
細胞膜は脂質二重層で構成されているため、抗体のようなサイズの大きい分子や親水性の高い分子は通過することができません。
従い、ペプチドについても一定のサイズを超えるものや、極性の高いアミノ酸を多く含むものは膜を通過することができません。そこで、
- サイズを小さくする
- 極性を小さくするため、非極性アミノ酸に置換する
しかし、一般論として、サイズを小さくすると選択性が低くなり、このアプローチはシンプルながら簡単ではなく、サイズの小さなヒットペプチドの取得を可能とするPDPSの技術アップデートの研究を続けています。
2.受容体を介した細胞内取り込み
PDCとしていつもご説明している技術も、細胞内へ薬剤を取り込ませる技術の1つです。
PDCとしていつもご説明している技術も、細胞内へ薬剤を取り込ませる技術の1つです。
PDCは特定の受容体に選択的に結合する特殊環状ペプチドと薬剤の複合体のことであり、特定の受容体を通じて薬剤を細胞に取り込ませます。
先月発表させていただいた武田薬品との提携(リンク)では、中枢神経に薬剤を運ぶため、トランスフェリン受容体に特異的に結合するペプチドを使って薬物を血液から脳血管の内皮細胞を経由して脳実質に運ぶことを目指しています。
また、アルナイラムとの提携(リンク)では、特定の細胞の中にsiRNAを運ぶためPDCの仕組みを活用しようとしています。
また、アルナイラムとの提携(リンク)では、特定の細胞の中にsiRNAを運ぶためPDCの仕組みを活用しようとしています。
まず、PDPSを用いて、ターゲットに対して阻害活性をもつヒットペプチドをスクリーニングします。その後、ターゲットにヒットペプチドが結合した状態での立体構造を把握します。
「鍵と鍵穴」の例示でいうならば、鍵穴に鍵が刺さった状態で写真を撮ることで、鍵のどのくぼみが鍵を回す上で重要なのかの情報を取得することができます。こうした情報に基づいて、鍵のくぼみ部分と同じ機能をもつ低分子医薬品をデザインすることが可能となります。
低分子をダイレクトにデザインするより、PDPSを行うことでまず最初に正解を知り、その情報から逆算して鍵をデザインするというアプローチを取ることができます。
チャレンジングなテーマですが、ペプチドリームでは引き続き、一歩一歩取り組んでいきたいと思います。
よろしくお願いいたします。