みなさま、こんにちは。IR広報部の沖本です。
RNAiが発見された当時、DNAの情報をタンパク質に変換する3種類のRNA(mRNA, tRNA, rRNA)以外のRNAの機能はよく解っていなかったため、非常にインパクトのあるものでした。
これは10年に一度の画期的な科学の前進とされ、2006年に発見者の2人はノーベル賞を受賞しました。
RNAi治療薬とは、RNAiという現象を利用して疾患に関連するmRNAを分解することでタンパク質が合成されるのを抑制するというコンセプトです。
2021年7月30日、ペプチドリームはAlnylam Pharmaceuticals(「アルナイラム」)とRNAi治療薬を送達するペプチド-siRNA複合体の創製・開発について共同研究開発を開始することを発表しました(リンク)。
これから共同で、肝臓以外の組織へRNAi治療薬をデリバリーするペプチド-siRNA複合体の創製を行っていきます。
RNAi(RNA interference、RNA干渉)は1998年にA.
FireとC. Melloらによって発見された生体内の現象で、siRNA(small interfering RNA、低分子干渉RNA)と呼ばれる小さなRNAの断片がmRNA(メッセンジャーRNA)からタンパク質が合成されるのを強力に抑制する(=サイレンシング)というものです。
RNAi治療薬とは、RNAiという現象を利用して疾患に関連するmRNAを分解することでタンパク質が合成されるのを抑制するというコンセプトです。
しかし、RNAは生体内で分解されやすいという弱点があり、それを克服し、patisiranがsiRNA治療薬としてはじめて上市するのは2018年のことでした。
アルナイラムはそれ以降givosiran(2019年US承認)、lumasiran(2020年US承認)、inclisiran(2020年EU承認、Novarits社が販売)と次々とsiRNA治療薬の上市に成功しますが、これらの製品にはGalNAcの技術が使われています。
GalNAcは糖の一種で肝臓に多く発現しているASGPR(アシアロ糖タンパク質受容体)と結合し肝臓に取り込まれる性質があります。
核酸とGalNAcの複合体を作ることで肝臓へのデリバリーが効率的に行えるようになったのです。
今般のペプチドリームとアルナイラムの提携は、肝臓以外の組織に対しても、ペプチドリームのPDC医薬品のアプローチを使うことによりsiRNAをデリバリーしようという試みです。
特殊環状ペプチドのターゲットに選択性高く結合する特徴と、RNAi治療薬のサイレンシング効果を組み合わせることで理想的な特性を産み出すことができ、非常に強力な、今までのアプローチでは難しかったような新たな治療薬が作りだせるのではないかと期待しています。
アルナイラムが15年以上かけてsiRNAというモダリティを製品まで育てたというのは素晴らしく、いい意味での執念を感じます。
ペプチドリームは、ペプチド創薬のリーディングカンパニーとして、ペプチドのあらゆる可能性を追求していきたいと考えています。
引き続きよろしくお願いいたします。
こちらもご覧ください
参考
アルナイラムウェブサイト https://www.alnylam.jp/our-science
アルナイラム開示資料 Annual Report Advances in RNAi Therapeutics Platform
アルナイラムウェブサイト https://www.alnylam.jp/our-science
アルナイラム開示資料 Annual Report Advances in RNAi Therapeutics Platform
Special Thanks Nagatomo-san