2019年10月13日日曜日

JSRとアフィニティクロマトグラフィーのリガンドに使用できる特殊ペプチドの共同研究を開始

みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。ペプチドリームでは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム・PDPSから得られる多種多様な特殊ペプチドについて、創薬に限らず、様々な分野で事業化が可能と考えています。その中で、市場ニーズが高く、高い収益性が見込め、既存品からの代替が進むと考えられる分野に関しては、その分野で実績のある企業と共同研究を開始することで早期事業化を目指す戦略を進めています。

今回は抗体医薬品などのバイオ医薬品の精製工程で用いられる「アフィニティクロマトグラフィー」のリガンドとして使用できる特殊ペプチドの共同研究をJSR株式会社と開始することで合意したことを9月20日に発表しました。

抗体医薬品などのバイオ医薬品の高薬価の要因の一つが製造コストの高さにあります。バイオ医薬品の製造工程は、動物細胞(CHO細胞など)を用いて培養することで目的とするタンパク質を作る工程と、培養液から産生細胞を除去し目的とするタンパク質だけを分離・精製する工程からなります。この分離・精製する工程で用いられる技法がアフィニティクロマトグラフィーと呼ばれるものです。このクロマトグラフィーに使用されている組換えプロテインAなどの「タンパク質リガンド」が分離・精製工程の高コストの主因となっています。リガンドとは、目的とするタンパク質だけに特異的に結合(吸着)し、pHなどの環境変化で脱離する物質です。アフィニティクロマトグラフィーは、リガンドを担体に固定したアフィニティクロマトグラフィー担体をカラムと呼ばれる管に詰めた構造をしており、培養液を流し込むと、目的とするタンパク質のみがリガンドと結合してカラムに残ります。そこに例えばpHが酸性の溶液を加えることでリガンドを脱離させて目的とするタンパク質だけを取り出します。

しかし、タンパク質リガンドは培養で作成するため価格が高く、酸性の溶液で壊れて残がいが残ってしまう可能性があるなどの問題があります。これらの問題は特殊ペプチドリガンドでは解決できる可能性が高く、もっときれいに簡便に安く抗体医薬品などのバイオ医薬品を分離・精製できる技術を求めている高い市場ニーズに応えるものと考えられます。私は人での試験が必要なものではないため5年以内に実用化の可能性もあると予想しており、今後の展開が楽しみな分野と思っています。