みなさま、こんにちは。IR広報部の沖本です。2022/3/24の経営説明会で「MPC」という新たな創薬アプローチの考え方について説明させていただきました。
ペプチドリームの3つの創薬アプローチ
これまで、創薬アプローチは①ペプチド、②低分子、③PDCという分類をしていました。
①ペプチドは、ペプチドそのものを薬にするという、もっともベーシックなアプローチです。②低分子とは、ヒットペプチドの構造情報をもとに低分子医薬品をデザインし、開発していくというアプローチです。対象疾患などによって経口剤として開発したいというニーズがある場合など、このようなアプローチを取っています。ペプチドと別の化合物の複合体を作るアプローチはこれまで③PDCというご説明をしていましたが、今回MPCというアプローチをご紹介したいと思います。
PDCとは
あらためてPDCを説明すると、PDCとはペプチドを使って薬効成分を目的の場所に運ぶというものです。ペプチドはあくまで、キャリア―・運び屋であり、抗体・核酸・低分子など様々なものを運ぶことができます。PDCの代表的な用途としては
・がん細胞に特異的に発現しているレセプターに結合するペプチドを用いて、薬効成分をがん組織に運ぶ
・血液脳関門と呼ばれる脳のバリアを通過して薬効成分を脳に運ぶ
などがあります。
また、PDCが他のモダリティ(※)の成長を牽引するという点も注目されています。2021年のAlnylam社との提携にあるように、核酸医薬品は肝臓以外の組織へのデリバリーの手法が確立していないため、核酸医薬品との複合体は高い期待を集めています。
2021年はPDCの領域で武田薬品・Alnylam社と、大きな新規提携を2つ行い、PDCがペプチドリームの事業面で大きなウエイトを占めるようになってきています。
※モダリティ:医薬品の種類・タイプ・治療手段。ペプチド、核酸、遺伝子治療、細胞治療などが新しい創薬モダリティとして注目されています。
4つ目の創薬アプローチ:MPCとは
MPCは今回新たなコンセプトとして説明させていただきました。PDCが薬効成分を運ぶ「運び屋」であるのに対して、MPCというのは複数つなげた成分がすべて薬効を持つというものです。
Biohaven社と行っているBHV-1100については、これまでPDCという言い方をしてきましたが、正確にいうとMPCであるということです。ペプチドリームが創製したペプチドはCD38に結合するという機能を持っており、Biohaven社のARMという分子は免疫細胞をリクルートしてくる機能を持っており、両方が薬効を持っています。
抗体を使って複数ターゲットへアプローチし相乗効果を狙う場合、下図のバイスペシフィック抗体というのがあります。これは2つの抗原に同時に結合できるタイプの薬剤です。複数の抗体医薬を同時に投与するというやり方もあります。
バイスペシフィック抗体
これらの既存のアプローチはMPCを使ってもできます。さらに、ペプチドを使うことにより、
・多剤の組み合わせが実現可能
・抗体医薬品の問題となる免疫原性の問題を回避できる
・開発期間・コストを大幅に削減できる
というメリットがあると考えています。この「多機能」薬剤の領域をMPCを使って大きく前進させたいと考えています。ペプチドリーム社内での技術的な開発はほぼ完了しており、どのターゲットを組み合わせるかという議論を行っています(パートナーと行っているものも一部あります)。MPCはPDCの次にペプチド創薬を牽引する領域として非常に期待できると考えています。今後、個別のプログラムについて、具体的にお話できる段階になったらご説明したいと考えています。
どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。