みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。当社は12月10日に「クライオ電子顕微鏡を用いた独自の構造解析技術を有するキュライオ社との戦略的パートナーシップに関する覚書締結のお知らせ」を発表しました。
当社のPDPSを用いた創薬は、1兆種類以上の特殊ペプチドからなる化合物ライブラリーを作成し、その中から病気の原因となる標的分子(ターゲットタンパク質)と強く結合するものを短期間で選び出すことから始まります。その後に“構造解析”を実施し、得られた情報をもとに特殊ペプチドを薬剤候補化合物へと仕上げていく、最適化作業を行います。
構造解析とは、選び出した特殊ペプチドが、標的タンパク質のどこに、どのように結合しているのかを画像等のデータをもとに立体構造の情報として解析することです。当社が目指している、より効果が高く、副作用の少ない医薬品の開発にはこの構造解析が重要な役割を担っているといえます。
現在の構造解析の主流は、標的タンパク質の調整や結晶化を経たX線構造解析です。当社にはその領域のスペシャリストからなるチームが存在し、毎年優秀な人材が加わり、高いレベルの仕事を行っております(最近の当社の創薬力アップへの貢献は大です)。ただし、X線構造解析は解像度も高く優れた解析方法なのですが結晶化が必要という制約がありました。
今回、戦略的パートナーシップに関する覚書を締結したキュライオ社は、クライオ電子顕微鏡を用いることで、結晶化が困難であったタンパク質(膜タンパク質や複雑なタンパク質複合体など)についても構造解析を可能とする技術を有しています。すでに当社も実際に使用した実績があり、今回の戦略的パートナーシップで両社のプラットフォーム技術を組み合わせることで、当社の創薬研究の範囲がこれまで以上に拡がり、薬剤候補化合物に仕上げるまでの期間短縮につながるのではないかと期待しています。