2018年6月30日土曜日

菅教授の社外取締役退任について

みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。創業者(技術ファウンダー)である菅教授が当社の社外取締役を退任するというニュースに驚かれたと思います。ご心配をかけていると思いますが、今回の辞任の理由は、ニュースリリースに明記しているように、利益相反に準じる関係が生じてしまう懸念を回避するためです。円満退任ですので、ご安心ください。

大学発バイオベンチャーであるペプチドリームは、創業以来、この利益相反に対して厳格に対応してきた会社です。菅研(東京大学の菅教授の研究室)とペプチドリームとは完全に分離し、研究資金についてペプチドリームは菅教授に頼らないこと、菅教授もペプチドリームに研究費を要求しないという明確なルールを設けて厳守してきました。創業者が大学の先生である大学発バイオベンチャーの場合、世間知らずの大学の先生が自分の会社と勘違いし、企業を財布のように考えて、自分の研究費用を出させることがまれに見受けられるのですが、ペプチドリームは利益相反が懸念される行為には最も厳格に対応してきました。

今回のことは、菅教授と他の大学教授との共同研究の成果を活用した新しい会社が設立されることになり、菅教授がそこでも社外取締役を務めることになったことがきっかけです。菅教授がペプチドリームの取締役会等で得た会社の開発戦略や提携交渉等をもう一方の会社で話すということ(及びその逆についても)は、菅教授が2006年7月にペプチドリームの取締役になって12年、ともに歩んできたペプチドリームの人間は全く疑っていませんが、第三者からみるとそのような利益相反に準じる関係が生じてしまうことを懸念する声もあり、李下に冠を正さずということで、その懸念を回避するために、当社の社外取締役を辞任する選択をなさることになりました。

なぜペプチドリームの方を辞任したのかと思われるかもしれません。ニュースリリース中の菅教授のコメントにありますように、菅教授はペプチドリームについては「技術ファウンダーの私からみても、ペプチドリームのもつPDPSは世界無二の技術として熟成しており、多くの大手製薬企業がその価値を極めて高く評価していることを身をもって感じています」と述べておられます。菅教授はビジネス側ではなく、アカデミア側の人間ですから、私は“知的好奇心”という観点から、世界大手製薬企業でその価値の評価が高くなっている熟成した技術より、共同研究から生まれたこれからの技術の方をより面白いとして選ばれたのではないかと推測しています。

ただし、菅教授のコメントを読んでいただくと、菅教授の“ペプチドリーム愛”が続いていることは伝わってくると思いますし、今後についても「新会社がペプチドリームとWin-Winの関係になれるよう邁進していく所存です」と書かれています。なお、今回のニュースリリースの菅教授のコメント、窪田さんのコメントともに、すべて本人が書いたものを一文字も訂正せずに、そのまま記載しています。

菅教授は特殊環状ペプチド(Macrocyclic Peptides/ Constrained Peptides / Pseudo-Nature Peptides)というカテゴリーを創り出した人物として世界的に知られています。菅教授の発表をずっと追っている菅ウォッチャーと呼ばれる研究者は世界的に増加しており、私もアナリスト時代から菅ウォッチャーの1人でした。私が窪田さんにペプチドリームに入るように誘われたときに、最終的に決断したのは菅教授からも一緒にやりましょうと声をかけられたからです。その私が、今年度最後のIR広報ブログで菅教授の社外取締役の退任について書かなければならないことはとてもつらいことです。しかし、社外取締役の肩書はなくなりますが、これからもペプチドリームの創業者であることに変わりはありませんので、このブログでは菅教授について引き続き情報提供をしていきたいと思います。

窪田さんと菅教授がペプチドリームを創業したのが2006年7月3日です。12年前に「たった一人でも良い。病気で苦しんでいる方に『ありがとう』と言ってもらえる仕事がしたい。それがペプチドリームの夢です。」をミッションとする会社として設立されました。いまやPDPSで見いだされたヒット候補化合物をもとにした医薬品開発プログラムが全世界で80を超えて動いており、製品化を目指しています。PDPSを活用した特殊環状ペプチド医薬品が製品化されれば、菅教授のノーベル賞受賞という、もう一つの夢(ドリーム)もほぼ確実になると私は予想しています。

菅教授はこのブログについても書き始めの頃に「岩田さん、ブログの評判いいですよ。どんどん書いてください」と声をかけていただき、励まされました。2018年6月期のIR広報ブログは今回を含めて累計で126となりました。7月からの新年度も当社の活動をなるべくタイムリーに、わかりやすく伝えている努力を続けますので、よろしくお願いいたします。