みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。ゴールデンウィーク前半、4月29日、30日と広島に行ってきました。毎回、広島に行くたびに思うことは、科学技術を人類の幸福のために使用する大切さです。
放射性物質はごく微量であれば、生体内の状況を分子レベルで伝えてくれる貴重な情報源となり、医療分野で多大な貢献をしています。
当社は今年2月に、米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ(以下 BMS社)との共同研究開発プログラムにおいて、BMS社がバイオイメージング剤の臨床開発を開始したことを発表しました。バイオイメージング(分子イメージングともいいます)剤とは、生物が生きた状態のまま、外部から生体内のタンパク質などの様々な分子の挙動を観察することを可能にする薬剤(診断薬)です。今回のバイオイメージング剤は、がん細胞の目印となる“がん抗原”に特異的に結合する特殊環状ペプチドをPDPSにより見い出し、それをごく微量の放射線(ガンマ線)を放出する放射性同位元素(フッ素18等)を組み込んだ化合物(放射性リガンド)と結合させた構造(PDC)となっています。これをPETという医療機器と組み合わせることで、がん細胞の悪性の度合い(特定のがん抗原を高発現したがん細胞かどうか)、体内のどこにどのように分布しているのかがわかるだけでなく、治療を開始した後に治療効果が出ているかどうかをモニタリングできるようになると予想されます。PETを使用することでターゲットの追跡が可能という意味で、このような薬剤をPETトレーサーと呼んでいます。
特殊環状ペプチドを用いたPETトレーサー(以下 PETトレーサー・ペプチド)の優れたところは、役割を終えたら体内から消えるようにニーズに合わせた設計が可能なことです。また、様々ながん抗原に対して開発が可能です。私は、抗がん剤をより的確に使用するために、PETトレーサーの使用が拡大すると考えており、今後は抗がん剤とセットでPETトレーサー・ペプチドの開発ニーズが高まると予想しています。PETトレーサー・ペプチドは抗がん剤とセットとして使用される診断薬としてグローバルスタンダードが目指せる将来性の高い事業へと発展する可能性を秘めていると思っています。