みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。当社は2月7日(水)の16時に、「新規抗インフルエンザ薬PD-001の前臨床試験結果のお知らせ」を発表しました。
当社は、昨年8月9日に発表した17/6月期の決算短信の中で「自社創薬については、特殊環状ペプチドを医薬品として活用するアプローチとして、抗インフルエンザウイルス特殊環状ペプチドPD-001についてGLPに準拠した前臨床試験を開始しており、17年末にデータ収集の終了を計画しております」と記載したこともあり、新規抗インフルエンザ薬PD-001について進展があったらきちんと報告したいと思っていました。
前臨床試験の最初のステージであるGLP準拠の毒性試験が終了し、これまでの解析結果からは、さらなる開発に問題となる点がないことが判明しております。臨床試験にもっていくための第一関門をクリアしたと考えられるため、このタイミングで開示しました。
簡単に、当社が開発を目指している抗インフルエンザ薬を紹介します。インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することで起きる病気です。感染から発症までは3つの段階に大別できます。①感染・細胞内へ侵入(インフルエンザウイルスが患者の細胞に結合し、細胞内に侵入し、膜融合することで細胞内にウイルスの本体である遺伝子RNAを挿入する)、②細胞内での増殖、③細胞外へ放出の3段階です。
既存のインフルエンザ治療薬はいずれも③の過程を阻害するもので、細胞内で大量に増殖したウイルスが細胞外に拡がっていくの防ぐ作用の薬です。この薬は細胞内でのウイルスの増殖は阻害できません。
一方、現在話題になっている塩野義製薬が自社創製した新規インフルエンザ治療薬S-033188「ゾフルーザ錠」は、②の段階に作用する薬です。ウイルスの増殖に必須なRNA複製過程の最初の反応となるmRNA合成の開始を特異的に阻害するため、細胞内でのウイルスに対して強い増殖阻害を示すことが期待できる新しい作用メカニズムです。18年2月2日に開催された厚生労働省の部会で承認が了承されています。
これに対して、当社のPD-001は、①の段階に作用します。インフルエンザウイルスの表面には2種類の釘(くぎ)のような形をしたタンパク質があります。2種類の手を持っているとイメージしてください。①の段階、細胞にくっついて細胞内に侵入するする際にはこの2つの手のうちヘマグルチニン(HA)と呼ばれる手を使います。ちなみに、細胞から出ていくときにはもう一方の手(ノイラミニダーゼ:NAと呼ばれています)を使用します。特殊環状ペプチドであるPD-001はこのHAを標的タンパク質としております。
当社がこれからフェーズⅠ臨床試験に入る前にやるべき作業として、ヒトでの投与量を決めたり、単独でいくのか併用でいくのか、併用ならばどの既存薬との組み合わせるのかなどを決めること等が必要となります。この開発作業を加速するために、いくつかの製薬企業と共同開発もしくはライセンスアウトに向けた話し合いを行っております。
私は今年の1月中旬に人生初のインフルエンザにかかりました(A型でした)。熱が39度あり、体がきつく、這うような感じで病院に行きました。その経験から様々な症状に対応した、よりよい治療薬が早く出てほしいと実感しています。新たな進展がありましたらまた報告させていただきます。