みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。当社は16日(木)、「独バイエルAGとの創薬共同研究開発契約締結のお知らせ」を発表しました。本契約に伴い、当社は独バイエルAG社(以下 バイエル社)から契約一時金を受領します。
これで創薬共同研究開発の契約企業は18社となりました。18社の内訳は、国内製薬企業が6社、海外製薬企業が12社です。当社の契約締結企業の特徴は、海外製薬企業12社のうち11社が医薬品業界で世界売上高20位以内に入っている、いわゆる“ビッグファーマ”だということです。私はバイオアナリストを18年間やってきましたが、売上高20位以内のビッグファーマの半分以上と契約しているバイオ企業は世界的にも当社以外にないと思います。
バイエル社は、1863年と明治維新よりも前に設立された歴史ある会社です。ヘルスケアと農業関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業で、2016年のグループ全体の売上高は前年比1.5%増の468億ユーロ、当期純利益は同10.2%増の45億ユーロとなっています。「Science For A Better Life」というミッションのもと、イノベーションを成功の基盤と位置づけて、研究開発費は47億ユーロを投入されております。
バイエル社は、今回の創薬共同研究開発の目的について、「腫瘍、循環器領域などバイエル社の戦略的研究分野全体にわたり、高いアンメット・メディカル・ニーズのある分野で新たなリードストラクチャーを発見することにあります。」と同日に発表したニュースリリースに明記しています。バイエル社の医療用医薬品部門の創薬研究責任者のアンドレアス・ブッシュ氏は「優れたパートナー企業の技術とノウハウによる社内の専門知識の補完は、バイエル社におけるイノベーション戦略には必須の要素です。弊社の創薬活動にとって、ペプチドリーム社のPDPSは非常に有望な技術と認識しています。」と述べており、当社のPDPSに対して高い期待と評価をいただいております。
私の個人的感想ですが、今回の契約に天の配剤というか運命的なものを感じています。
バイエル社は近代医薬品の出発点とされる化学合成薬を開発した会社です。柳の木から抽出されたサリチル酸は痛みを抑える効果があり、リウマチの治療薬に使用されていましたが、多くの患者は強い副作用に悩まされていました。バイエル社の研究者フェリックス・ホフマン氏はサリチル酸をアセチル化することでこの問題を解決しました。これが今から120年前の1897年です。開発から2年後の1899年に、この世界初の化学合成薬は商品名「アスピリン」として発売され、今では解熱鎮痛剤の代名詞として、世界で最も知名度の高い薬と呼ばれています。バイエル社が低分子医薬品と呼ばれる巨大な医療用医薬品市場の基礎を作ったといえるのです。
これに対して、当社は当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを用いて、低分子医薬品と抗体医薬品の“いいとこどり”である特殊ペプチド医薬品を開発するとして上場しました。そして現在は、PDPSから生み出される特殊環状ペプチドから得られる情報を活用することで、より効果が高く、副作用の少ない次世代型の低分子医薬品の創製にも力を入れています。
現在の近代医薬品市場の基礎を作ったバイエル社と、2020年代に新たな医薬品市場を創出しようとする当社が、近代医薬品の先駆けとなるアスピリン開発成功後“120年”という記念すべき年に提携し、創薬が困難な標的を対象として、いまだ有効な治療方法がない、いわゆるアンメット・メディカル・ニーズのある疾患分野で新しい治療薬の開発を始めるのです。何かしら運命的なものを感じませんか。
16日にドイツからバイエル社の方々が来社され、当社施設の見学をされました。これから複数の創薬ターゲットに対して、開発がスタートします。
もう1つだけ、今回の契約には、これまでにない特徴があります。バイエル社は医療用医薬品以外に画像診断関連製品及び農薬についても世界大手企業であり、本契約にはPDPSを用いて診断薬、バイオイメージング薬及び農薬として研究開発するオプションがついていることです。
大学時代に食糧危機を解決することを主目的にバイオテクノロジーを勉強した私の個人的願望としては、バイエル社がオプションを行使し、PDPSを活用して新しい農薬を開発し、世界の食糧問題に貢献していただければうれしいなと思っています。長くなりましたが、ワクワク感あふれる提携だと私は思っています。