2022年9月6日火曜日

PD-L1阻害ペプチドの特徴

みなさま、こんにちは。IR広報部の沖本です。

2022年Q2決算説明会で、ペプチドリームとBMS社が共同研究開発を実施しているPD-L1阻害ペプチドの優位性について説明させていただきました。

BMS社Opdivo®(オプジーボ)という免疫チェックポイント阻害剤を持っているなか、次世代品としてPD-L1阻害ペプチドのフェーズ1試験を2022/4より開始しました。Opdivo®は抗PD-1抗体という抗体医薬品ですが、現在市場に出ている抗体の免疫チェックポイント阻害剤には以下のような性質があり、次世代品のベネフィットがあると考えられます

体内動態の制御

抗体は分子量が大きいため、一般的に体内滞留性が高いと言われています。Opdivo®は投与後100125日体内にとどまるということです(※1)。

1 Drugs.comより

免疫原性リスク

抗体医薬品は投与した患者さんの体内で抗体の産生が誘導され、場合によって有効性や安全性に悪影響を及ぼす可能性があります。

このような点から、チェックポイント阻害剤による治療効果がでる患者さんは~25%程度であり、また、長期の効果が出にくいということもあるそうです(※2)。

 さらに、免疫チェックポイント阻害剤は免疫細胞を活性化することにより薬効を発揮するので、免疫反応が過剰になったことにより重度の免疫関連の副作用IRAE: immune-related adverse events)が発生してしまうケースもあります。

それに対してPD-1/PD-L1の阻害を低分子で行うという試みが論文になっていることをみずほ証券シニアアナリスト 都築さんに教えていただきました。

Therapeutictargeting of PD-1/PD-L1 blockade by novel small-molecule inhibitors recruitscytotoxic T cells into solid tumor microenvironment(※2

この論文によると、PD-1/PD-L1の阻害剤が低分子である場合、体内の滞留時間が短いため、免疫関連の副作用が生じて投薬中止の必要が生じた場合、副作用の影響を迅速に減らすことができます。また、低分子の方ががんの微小環境(※3)への浸透率が高いことも考えられます。

3 がんの周りにはがん細胞に加え免疫細胞やそれ以外のさまざまな細胞、非細胞成分が存在し、正常細胞の環境とは大きく異なっていることが知られています。特に、免疫を抑制する仕組みが働き、がん細胞が免疫細胞の攻撃を受けず増殖がしやすい環境となっているということが言われています。がん微小環境においても免疫細胞が働きやすい環境を作ることが重要だと考えられます。

ペプチドの分子量は抗体の1/100程度であり、体内動態のコントロールが可能がん組織への浸透率が高いというメリットはペプチドでも成り立つと考えています。(抗体とペプチドの性質の比較はADCとPDCの比較のスライドに記載している通りです)。

(2022年12月期 第2四半期決算説明会資料 Page26)

PD-L1阻害ペプチドの臨床開発の進捗はペプチドリームにとって大きなカタリストとなると考えており、期待しています。
進捗があり次第、お知らせさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。