2020年5月12日火曜日

新型コロナウイルス感染症の治療薬に関する当社の取り組みについて

みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。4月30日の15時30分に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ならびに将来的に発生しうる変異型を含めたコロナウイルス全般に対して、特殊ペプチドを用いた抗ウイルス治療薬の研究開発を開始したことを発表しました。

ペプチドリームの創薬の特徴は、病気の原因物質(原因タンパク質)がわかれば、それを標的(ターゲットタンパク質)として治療薬のもととなる候補化合物が開発できることです。新型コロナウイルスについても、ヒト細胞にどのような作用メカニズムで感染するのかの解明が進んだことで、どこを標的すればよいのかが明らかになってきました。

コロナウイルスは、ウイルス表面に形状が王冠(コロナ)に似た突起を持つことが特徴で、この突起はスパイク(S)タンパク質からなっています。当社の創薬は、このスパイクタンパク質のS1領域(突起の頭の方の領域)とS2領域(突起の根っこの方の領域)を標的とします。S1領域とS2領域のそれぞれに特異的に結合する特殊ペプチドを当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを用いて特定することで、コロナウイルスがヒト細胞に感染する際の最初の入り口であるACE2受容体とS1領域の結合を阻害する特殊ペプチド医薬品、コロナウイルスがヒト細胞に侵入する際に関与するS2領域に結合することでヒト細胞の膜との融合を阻害する特殊ペプチド医薬品、そして特殊ペプチドをS1領域またはS2領域に選択的に医薬品や免疫細胞を誘導する機能を有する小分子化合物を運搬する運び屋として活用することでウイルスを直接攻撃するPDC医薬品、以上3つのアプローチの治療薬の研究開発を行ってまいります。

新型コロナウイルスに対して一からの創薬となりますが、当社がインフルエンザウイルスのヘマグルチニンを標的タンパク質として開発を進めてきた抗インフルエンザウイルス治療薬や米国Kleo社と共同研究開発を行っているPDC医薬品等の研究開発で培ったノウハウがいかせ、研究開発期間を短縮できると考えております。

今回のニュースリリースでは、3つのアプローチでの創薬を行うことのほかに、もう1つ、みなさまに伝えたかった内容があります。現在問題となっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の治療薬の開発だけでなく、将来的に新たなパンデミックを起こす可能性がある遺伝子変異を起こした新たな新型コロナウイルスに対する治療薬の研究開発も開始したことです。

ニュースリリースに書きましたように、現在、当社では、複数の創薬共同研究開発パートナー候補との間で、事業・戦略上の協業可能性について協議を進めています。具体的になりましたら、その取り組みとメカニズムについてあらためて説明をしたいと思っています。