2019年1月29日火曜日

中枢神経疾患領域におけるPDC医薬品の創製を目指します

みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。当社は1月23日(水)にワクワクする契約を塩野義製薬と締結することができました。PDCの共同研究に関する契約締結です。共同研究の対象となる疾患は中枢神経疾患、原因が脳の機能にあると考えられている病気です。高齢化が進み、またストレス社会の広がりもあり、今後ますます患者が増えることが予想される疾患領域ですが、効果の高い薬がきわめて少なく、残された医療のフロンティアと言われている領域です。

なぜ効果が高い薬が少ないかというと、脳はとても大切な器官ですので、血液中から脳組織へ異物が入ってこれないように血液脳関門(BBB:Blood Brain Barrier)と呼ばれる仕組みがあるからです。薬も異物と認識されますので、脳組織へうまく届かないのです。

ですので、効果の高い中枢神経系の治療薬の開発には、薬剤の血液脳関門(BBB)の通過を促す脳送達技術の開発が求められます。今回の共同研究の第一の目標はここになります。まず行うことは、当社が脳移行性に関わることが知られている複数の標的分子に対して、PDPSを用いて、医薬品及び医薬品候補化合物の脳移行性を向上させるカーゴペプチドを探索することになります。

先ほど、脳の毛細血管には血液中から脳組織へ異物が移行するのを防ぐ血液脳関門というバリアがあるといいました。しかし、脳は活発に働く器官ですのでエネルギー源となる栄養素等が必要であり、これらを血液を通じて補給するルートはあります。それら補給路の入り口が狙いです。これが今回の標的分子となります。

当社の特殊ペプチドは、狙った標的分子のところに到達し強く結合するという特性を持っています。今回はその能力をこれら標的分子へ薬剤となる化合物を届ける運び屋として活用するのです。貨物船のことを英語でカーゴシップ(cargo ship)といいますが、標的分子まで薬剤を届けるように特殊ペプチドに薬物を結合するためのリンカーを付加したものをカーゴペプチドと呼んでいます。

今回のニュースリリースの後に、一番多かった質問はJCRファーマとの関係です。JCRファーマは脳毛細血管の内側を覆っている血管内皮細胞の表面に発現しているトランスフェリン受容体というレセプターを介することで、静脈内投与した薬剤の血液脳関門(BBB)を通過する技術の開発に成功しており、その独自開発技術をJ-Brain Cargoと名付けています。当社はJCRファーマと2016年2月に共同研究契約を締結し、このトランスフェリン受容体を標的分子とした特殊ペプチドを用いたカーゴペプチドの創製を行うことで、新たなJ-Brain Cargoの創出に取り組んでいます。質問の答えは、今回の塩野義製薬との契約はトランスフェリン受容体以外の脳移行性に関わることが知られている複数の標的分子に対してカーゴペプチドを探索するものであり、JCRファーマとの共同研究は当社の重要案件と認識しており、引き続き強力に推進していくということです。

JCRファーマおよび塩野義製薬との共同研究を通じて、様々な化合物の血液脳関門(BBB)通過を促す脳送達技術プラットフォームを構築できれば、中枢神経系(CNS)治療薬の研究開発における当社の役割がとても大きくなることが期待されます。塩野義製薬は、説明会資料によると、重点領域の1つに疼痛・神経領域を置き、神経領域の創薬戦略では基盤構築に外部連携を活用し次世代精神薬の創製の加速を掲げておられます。私の周りにも認知症やうつ病などで困っている方がおられます。この領域に実績があり、熱意のある企業と共同研究を開始できるのです。とてもワクワクする契約と思っています。