2018年12月21日金曜日

特殊ペプチドを用いた新たな診断/治療薬の共同研究開発に着手します

みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。当社は12月18日に「特殊ペプチド技術を用いた新たなセラノスティクスの実現に向けた戦略的共同研究開発および商業化に関する覚書締結のお知らせ」をリリースしました。

何を目指しているのかというと、新たながん治療として世界的に注目が集まっている、RI(ラジオアイソトープ:放射性同位体)を用いた、診断と治療を一体化した医療(セラノティクスといいます)を、放射性医薬品の国内トップメーカーである日本メジフィジックス株式会社と、戦略的提携を行い共同研究開発することで実現しようというものです。

まだわかりにくいと思いますので、私がこの薬剤のメカニズムを聞いて思い浮かべたイメージをお伝えします。先週、テレビでシンゴジラの映画の放送をしてましたが、東京に上陸したゴジラを殺すために核を乗せたミサイルを使用したいのですが、従来の技術ではゴジラと共に東京23区も火の海になるので使用できませんでした。そこで新たな技術として、強力な放射線でありながらも到達した近辺のみで威力を発揮するα線を搭載したミサイルをゴジラ細胞特異的に到達するミサイルとして開発します。α線がゴジラ細胞のDNAだけを切断することでゴジラを死滅させるというものです。周辺に影響を与えることはありません。仮にゴジラが転移能力をもって日本の各所に同時多発的に出現しても対応できるというイメージです(私のイメージです)。

当社の特殊ペプチドは、狙った標的分子のところに到達し強く結合するという特性を持っています。今回はその能力を特定のがん細胞の表面にある標的分子へRIを届ける運び屋として活用するのです(RI標識したカーゴペプチドといいます)。ピンポイントでの医療の実現に、高い特異性を持った特殊ペプチドの果たす役割は大きくなるだろうことが予測されます。

セラノスティクスの概念とは、標的分子は同じで、カーゴペプチドも同じ、診断と治療でRIを変えるというコンセプトです。将来的には開発期間の短縮効果も出ると思います。

RIは放射線を放出する物質です。ごく微量とはいえ被爆国である日本人としては、「えっ、放射性物質を体内に入れるの」と思われるかもしれません。しかし、診断分野ではRIを活用した医療が広く普及しています。一方、治療用途としては、標的分子を発現している悪性のがん細胞のDNAだけを切断するために放射線を使用するため、強いDNA切断能を持つα(アルファ)線などを放出するRIを用いることになります。これは使い方によっては、がん細胞だけを死滅させる効果が期待できる一方で、標的分子への正しく届けることができなければ周辺の正常細胞に影響がでてしまうため、開発が進まない状況が続いていました。

ここを目指します。抗体を運び屋としてこの分野の開発を進めている企業はありますが、特殊ペプチドで開発に着手している企業はありません。世界初の試みとなります。特殊ペプチドは、抗体と比べて製造コストの面、薬物動態のコントロールの面などから優位性が高いと考えられます。医療におけるムダを排除するために個別化医療のニーズは高まっています。今回の戦略的共同研究開発はこれに応える分野と思います。